第12条に関する各国審査の最終所見

ChatGPTのDeep Researchの出力結果をもとに、修正をしている途中です。(2025.3.2 定者吉人)


以下は、子どもの権利条約第12条に関する子どもの権利委員会が発表したイギリス、フランス、フィンランド、韓国、オーストラリア、日本に対する最終所見及び一般的意見を整理したものです。

はじめに

子どもの権利条約(CRC)第12条は、子どもには自分の思いを自由にあらわす権利があり、子どもがあらわした思いは最大限考慮されると定めています (General Comment No. 12 (2009) The right of the child to be heard | Save the Children’s Resource Centre)。

国連の子どもの権利委員会は各国の条約実施状況を定期審査し、第12条の履行状況についても**最終所見(Concluding Observations)**で評価と勧告を行っています。本レポートでは、イギリス、フランス、フィンランド、韓国、オーストラリア、日本に対する第12条関連の最終所見の概要と共通課題を整理し、あわせて委員会の一般的意見(General Comment)から第12条実施のポイントを示します。

各国における第12条に関する最終所見の概要

英国(イギリス)

子どもの権利委員会は英国(2016年審査)において、子どもの意見表明が制度的に十分保障されていないことに懸念を示しました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。具体的には、「子どもに影響を与える政策決定で体系的に子どもの意見が聴取されていない」、「法的援助(リーガルエイド)の削減が司法・行政手続で子どもの意見聴取に悪影響を及ぼしている可能性」、「一部の自治地域(北アイルランド・ウェールズ等)でユース・パーラメント(青年議会)が未整備」、「社会福祉士や裁判官など子どもと関わる専門職が子どもの声を十分に聞いていない」といった課題が指摘されています (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。これらへの対策として、委員会は**第12条に関する一般的意見第12号(2009年)**を踏まえ以下を勧告しました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。

  • 子どもの参画構造の整備: 法律・政策・サービスの立案に子どもの意見を反映させる恒常的な仕組みを構築し、地方・国家レベルで子どもの意見に十分な考慮を払うこと(差別、暴力、性的搾取、有害な慣行、代替的養護、性教育、遊びなどあらゆる分野で、年少の子や脆弱な状況にある子にも特に配慮) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。
  • 法的援助改革の評価: 法的援助削減の子どもへの影響を評価し、子どもの司法アクセスや意見表明権が損なわれないよう見直すこと (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。
  • 青年議会の設置: 全ての地域・海外領土にユース・パーラメント等の常設フォーラムを早急に設置し、立法過程に子どもが意見を届けられるようにすること (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。
  • 専門職による子どもの声の尊重: 子どもと関わる専門家が子どもの意見に耳を傾け、真摯に受け止める姿勢を徹底すること(「子どもの声を聞くだけでなく、実際に耳を傾け、相応の重みを与える」) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。

さらに、選挙年齢の引下げについて子どもたちから要望が高まっている点に触れ、投票年齢を16歳に引き下げる是非を子どもと協議し、仮に引下げる場合は人権教育や市民教育を強化して子どもの主体的な権利行使を支援すべきと提言しました (CRC concluding observations 2016, paragraph 33 | Human Rights Tracker) (CRC concluding observations 2016, paragraph 33 | Human Rights Tracker)。これはスコットランドですでに地方選挙の投票年齢を16歳に引下げた動きを踏まえた勧告です (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。総じて英国には、子どもの意見をあらゆる場で体系的に聞き入れる文化と制度の確立が求められています。

フランス

フランス(2023年審査)では、首相と子ども代表団の定期対話など良い取組みに言及しつつも、子どもの意見聴取に関する法律・政策の実施を徹底する必要があるとされました ()。委員会は第12号一般的意見を踏まえ、以下の勧告を行っています () ()。

  • 法律・政策の履行強化: 「子どもの意見を聞く権利」を定めた各種戦略・法律(2020年子ども保護戦略、2017年4月通達、2022年2月子ども保護法)を効果的に実施する措置を取ること。特に社会福祉士や裁判所で子どもの意見を確実に尊重する手続を整備すること ()。
  • 被害児童の意見聴取環境整備: 警察での**「メラニー室(Mélanie rooms)」**の活用を徹底し、被害児童の証言収集とケアを行う小児受け入れユニットを拡充すること。またこれらへの公的資金を増やし、被害に遭った子どもが安心して話せる体制を強化 ()。
  • プロフェッショナルの研修: 司法を含むあらゆる子ども関連分野の専門職に対し、子どもの意見表明権に関する定期的かつ深化した研修を実施すること。また一般向け啓発も行い、社会全体で子どもの声を尊重する意識を醸成 ()。
  • 家庭・地域・学校での参加促進: 家庭、地域社会、学校において全ての子どもの意見が尊重され主体的に参加できるよう奨励すること。さらに、公的決定や政策・計画の策定・実施・評価に子どもが関与する仕組みを拡大すること ()。
  • 子ども参画組織の強化: 子ども評議会、子ども議会、若者政策協議会、家族・子ども・高齢高等評議会の子ども委員会など既存の子ども参画機関を強化し、実効的な権限と十分な資源を与えるよう勧告しました ()。これにより子どもが国家レベルの立法プロセスに実質的に参加できるようにする狙いです。

以上のようにフランスには、法制度上は子どもの意見尊重が位置付けられているものの、その実施の徹底と仕組み強化が求められています。専門職の訓練から参加組織の充実まで、多方面での取り組みが勧告されています。

フィンランド

フィンランド(2023年審査)について委員会は、子どもの意見が決定過程で体系的に考慮されていない点と、児童福祉法で12歳以上にしか公式な意見聴取の機会が認められていない点を指摘しました (CRC/C/FIN/CO/5-6)。これを受け、以下のような包括的勧告が示されています (CRC/C/FIN/CO/5-6) (CRC/C/FIN/CO/5-6)。

  • あらゆる場面での意見表明保障: 年齢に関係なくすべての子どもが自身に影響するあらゆる決定で意見を表明し、聞かれる権利を保障すること (CRC/C/FIN/CO/5-6)。特に裁判所や行政手続において、移民・庇護申請、親権・監護、養子縁組、社会的養護措置、福祉サービス、家庭内暴力対応といった決定で子どもの意見を聴取することを徹底し、親や保護者の同意を子どもの意見聴取の前提条件にしないよう求めました (CRC/C/FIN/CO/5-6)。
  • 年齢制限の撤廃: 上記のような決定に際し、子どもの意見聴取に年齢制限を設けないよう法律改正を行うこと(12歳未満でも意見表明できるようにする) (CRC/C/FIN/CO/5-6)。
  • 地方レベルでの参加機会整備: 全ての自治体に「若者評議会(ユースカウンシル)」等の仕組みを整備し、地域のあらゆる社会分野で子どもの参加権が保障されるようにすること (CRC/C/FIN/CO/5-6)。
  • インクルーシブな参加推進: 家庭、地域社会、学校において恵まれない状況にある子どもを含む全ての子どもが意義ある形で参加できるよう取組を強化し、自治体・国の政策立案に子どもの意見を反映させること (CRC/C/FIN/CO/5-6)。特に障害のある子など脆弱な子どもが確実に参加できるよう支援する姿勢が求められています (CRC/C/FIN/CO/5-6)。
  • 専門家への研修: 裁判官、教師、児童福祉関係者など子どもと関わる全ての専門職に対し、子どもの意見表明権とその尊重方法に関する適切な研修を体系的に行うこと (CRC/C/FIN/CO/5-6)。子どもの意見を年齢や成熟度に応じて考慮するスキルを涵養する狙いです。

フィンランドへの所見は、法律上の年齢制限を撤廃し制度を改正するという具体的勧告が特徴です (CRC/C/FIN/CO/5-6)。同時に地方自治体から家庭まで幅広いレベルで子どもの声を反映させる包括戦略が求められており、特に12歳未満の子どもの権利保障に力点が置かれています。

韓国(大韓民国)

韓国(2019年審査)では、子どもの参加が付け焼き刃的(ad hoc)で制度化されていないことが問題視されました ()。委員会は、2017年の家事訴訟法改正案で13歳未満にも意見表明権を拡大しようとする動きを評価しつつも、子どもの意見表明の機会が任意で特定のテーマに限られ、学業成績などによって制限されていること、そして子どもの意見が政策・法律に活かされる程度が不明瞭であることを懸念しています () ()。実際、学校では成績上位者だけが参加する仕組みになりがちで、子どもの意見が考慮される場面が少ないという指摘です。また、子どもが参加した場合のフィードバックが充分でない点も課題として挙げられました ()。これらを踏まえ、委員会は次の勧告を行いました。

  • 年齢・成績による制約の是正: 学校において全ての子どもが学業成績に関係なく意見を述べる機会を持てるようにすること () ()。また児童福祉法において、年齢に関わらず子どもの意見表明権を保証する規定を設けるよう求めています ()(※前回韓国審査時の勧告を再度想起 ())。さらに、子どもの意見表明権に関する年齢上限を撤廃すること、すなわち年少の子も含めあらゆる問題で子どもの意見を表明できるよう法改正を迅速に行うよう促しました ()。家事訴訟法改正案の早期成立を通じてこの課題に対応するよう期待が示されています ()。
  • 子どもの意見を考慮する体制の整備: 子どもの意見に家庭、学校、裁判所、行政その他あらゆる場で正当に配慮を払うことを国家に強く求めています () ()。具体的措置として、家庭内や学校で子どもの意見が尊重される文化を醸成し、司法・行政手続では子どもの意見を聴取し考慮する明確な手順を設けるよう勧告しました。
  • 学校規則・制度の見直し: 韓国では校則による子どもの権利制限(持ち物検査やプライバシー侵害等)も問題視され、学校規則を改正して子どもの表現の自由を保障すること、そして子どもが懲罰を恐れず集会や発言できるようにすることが求められました ()(これは第13条~第15条にも関連する勧告)。あわせて、投票年齢・政党加入年齢(当時19歳)の引下げについて検討するよう促しています ()。
  • 子ども政策への参加とフィードバック: 委員会との対話では、韓国政府が毎年「全国子ども総会(子どもアセンブリー)」を開催し子どもの声を政策に反映していると説明しました ()。委員会はこうした取組を評価しつつ、子どもの提言が実際に政策・法律にどう反映されたかフィードバックする仕組みを強化するよう求めました ()。

以上より韓国には、子どもの参加を一過性のイベントで終わらせず制度化すること、特に年齢や成績による不平等を是正し全ての子どもに発言機会を保証することが強調されています ()。また学校文化の改善や投票年齢の見直しなど、子どもの社会参画を広げるための改革も含まれています。

オーストラリア

オーストラリア(2019年審査)では、子どもの意見を法制度に組み込む具体策が詳細に勧告されました。委員会は前回勧告を踏まえつつ、第12号一般的意見に照らして以下の点を推奨しています (CRC/C/AUS/CO/5-6)。

  • 家族法における権利保障: 1975年家族法(Family Law Act)を改正し、非司法型の家族サービスを含むあらゆる事項で、全ての子どもが年齢や成熟度に応じて自分の意見を表明し聞いてもらう機会を持てるようにすること (CRC/C/AUS/CO/5-6)。これにより裁判外の調停や相談の場でも子どもの意思が反映されるようにします。
  • 移民法における権利保障: 1958年移民法(Migration Act)を改正し、移民手続のあらゆる段階で子どもの意見尊重が保証されるようにすること (CRC/C/AUS/CO/5-6)。庇護申請や収容手続等で子どもの声が軽視されないよう法的担保を求めました(難民・移民の子どもの権利保護)。
  • 子ども代理人の質の向上: 家庭裁判所で子どもの利益を代弁する**「独立子ども弁護士(Independent Children’s Lawyers)」**に対し、子ども本人と直接対面し意見を聞くことを徹底できるよう訓練・支援すること (CRC/C/AUS/CO/5-6)。現状では代理人が子どもと十分面談せずに手続が進むケースもあり、これを改善する狙いです。
  • 家庭・地域・学校での参加促進: 家庭、コミュニティ、学校における子どもの意義ある主体的参加を強化すること (CRC/C/AUS/CO/5-6)。特に女児、障がいのある子ども、先住民族(アボリジニおよびトレス海峡諸島民)の子どもといった周辺化されがちな集団に注目し、これらの子どもが発言しやすい環境を整えるよう求めました (CRC/C/AUS/CO/5-6)。
  • 子どもへの公共政策コンサルテーション: **子どもが政策に意見できる「ツールキット」**を開発すること (CRC/C/AUS/CO/5-6)。特に気候変動や環境など、将来世代に関わる問題について子どもから意見を集める手法を整備するよう提言されています (CRC/C/AUS/CO/5-6)。これは子どもたちによる気候変動ストライキなど社会運動の高まりを受け、政策策定時に子どもの声を取り入れるべきとの考えに基づきます。

オーストラリアへの勧告は、個別法律の改正から具体的施策開発まで詳細である点が特徴です。家族法・移民法といった分野ごとに子どもの意見尊重を明文化することや、弁護士・代弁者の役割強化、そして気候変動政策への子どもの参画まで、多岐にわたる場面で子どもの声を拾い上げる具体策が示されています (CRC/C/AUS/CO/5-6) (CRC/C/AUS/CO/5-6)。

日本

日本(2019年審査)に関する所見では、子どもの意見表明権の実情に対し極めて厳しい評価が下されています。他国同様に第12号一般的意見が参照されつつも、日本では子どもの意見尊重が十分でないことに委員会は「深刻に懸念する(seriously concerned)」と明記しました ()。これは最終所見全体の中でも緊急に措置を講ずべき分野の一つとして挙げられており(パラ4およびパラ22)、委員会の危機感の強さがうかがえます () ()。

委員会はまず、2016年の児童福祉法改正で「子どもの意見を尊重」する旨が明記されたこと、家事事件手続法で子どもの手続参加規定が整備されたこと自体は言及しました ()。しかしその上で、**「子どもが自分に影響を与えるあらゆる事柄について自由に意見を表明する権利が尊重されていない」**と強い懸念を示しています ()。つまり法律上の理念と現実との乖離が大きいという指摘です。具体的勧告としては次の通りです () ()。

  • 年齢制限の撤廃: 意見を形成できるあらゆる子どもに対し、年齢による制限なく(without age limitations)自由に意見表明する権利を保証すること ()。またその意見が適切に考慮されるようにすること。日本では必ずしも年齢明記の制限はありませんが、慣行上「幼いから聞かなくて良い」とされる風潮への強い牽制と読み取れます。同時に、子どもが意見を述べたことに対し威圧や罰を受けないためのセーフガードを講じるよう求めています ()。これは子どもが大人に意見した際の報復や懲罰(例えば学校で意見を言った生徒が叱責される等)を防ぐ措置の必要性を示唆しています。
  • 意見表明の環境整備と参加促進: 子どもが自分の意見表明権を行使できる環境を整えること、そして家庭、学校、代替的養護(施設や里親)、医療・保健の場、司法・行政手続、地域社会などあらゆる場において全ての子どもの意見が積極的かつ意味のある形で尊重されるように促進することが勧告されました ()。特に「能動的でエンパワーされた参加(meaningful and empowered participation)」という表現で、単なる形式的参加ではなく子どもが主体性を持てる参加を保障するよう求めています ()。加えて、「環境問題を含むあらゆる関連分野」で子どもの意見を聴くよう言及し、例えば気候変動政策にも子どもの声を反映すべきことを示唆しています ()。

日本への勧告は、他国に比べても包括的かつ緊急度が高い内容となっています () ()。年齢による制限を課さないことや萎縮効果を防ぐ措置など、子どもの意見表明権を阻むあらゆる要因を除去する方向が示されました。また参加の領域も家庭内から環境政策に至るまで広範囲であり、日本社会全体で子どもの声を尊重する文化と仕組みへの転換が強く求められています ()。

各国に共通する子ども参加の課題と改善点

以上の各国所見から浮かび上がる、子どもの意見表明権(第12条)の共通する課題改善すべき点を整理します。

  • 法律・制度上の不備: 多くの国で、子どもの意見表明権が法律に十分反映されていない、または年齢などによる制約が設けられている問題が見られました。例えばフィンランドでは*「児童福祉法で12歳以上にしか意見聴取の機会がない」と指摘され (CRC/C/FIN/CO/5-6)、韓国でも「13歳未満は家庭裁判で声を上げにくい」*状況に懸念が示されています ()。このため各国への勧告では、年齢制限の撤廃や関連法の改正によってすべての子どもが意見表明できる法的権利を保障することが強調されました (CRC/C/FIN/CO/5-6) ()。法制度の整備は第12条実現の基盤であり、日本を含め各国で優先的な改善点となっています。
  • 政策立案・社会参加への子どもの関与不足: 政府や自治体の政策決定に子どもの声が十分反映されていないことも共通課題です。英国では「子どもの意見が政策形成で体系的に聞かれていない」とされ (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)、委員会は各国に子どもが政策策定に参加できる恒常的な仕組み(例:子ども議会・若者評議会)を整備するよう求めました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) ()。フィンランドでも全自治体で若者評議会を設置すべきとされ (CRC/C/FIN/CO/5-6)、フランスでも全国規模の子ども議会等の強化が勧告されています ()。つまり子どもが行政・立法プロセスに意見を届ける公式のルートを設け、子どもの視点を政策に組み込むことが各国共通の改善策です。
  • 司法・行政手続における意見尊重の不徹底: 裁判所や行政の場で子どもの声が十分に考慮されていない問題も多くの国で指摘されました。英国ではリーガルエイド削減が子どもの司法アクセスを阻害しうるとされ (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)、オーストラリアでは家族法や移民法において子どもの意見を聞く明文規定が不足していました (CRC/C/AUS/CO/5-6) (CRC/C/AUS/CO/5-6)。委員会は各国に対し、親権争いや虐待対応、難民審査など子どもに影響するあらゆる手続で意見を聴取し、決定に反映することを求めています (CRC/C/FIN/CO/5-6) (CRC/C/AUS/CO/5-6)。改善点としては、家事事件手続や庇護手続に子どもの意見聴取を義務づけるルールを整備し (CRC/C/AUS/CO/5-6)、必要に応じて子どもに代わり意見を代弁する支援者(弁護士・後見人)の質を向上させることが挙げられます (CRC/C/AUS/CO/5-6)。司法・行政分野で子どもの声を反映することは、権利保障の要となる改善策です。
  • 家庭・施設・学校における子どもの声の軽視: 社会制度に限らず、日常生活の場(家庭、学校、養育施設など)で子どもの意見が軽んじられる風潮も各国共通の課題です。英国では多くの子どもが「自分たちの声はソーシャルワーカーや裁判官に聞き入れられていない」と感じていると報告されました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。委員会は各国に、家庭・コミュニティ・学校において子どもの声に耳を傾ける文化を醸成し、専門職だけでなく親やケア提供者にも子どもの意見を尊重する意識を持つよう促しています (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) ()。特に日本では子どもが意見を言った際に萎縮しないよう威圧・罰から守る措置が勧告されており ()、家庭内や教育現場で子どもが安心して意見を言える雰囲気づくりが重要です。他国でも学校規則の見直し(韓国)や宗教行事への参加自由(英国 (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx))など、子どもの意思を尊重する方向での改善が提案されています。
  • 年齢・能力・条件による制限: 子どもの意見表明に年齢制限や能力要件を設ける慣行も共通課題です。フィンランドや韓国、日本では法制度や実務で**「○歳以上でないと言葉に重みが与えられない」傾向が問題視され、委員会は繰り返し恣意的な年齢基準を廃止するよう求めました (CRC/C/FIN/CO/5-6) () ()。また韓国では学業成績優秀な子だけが代表者となる慣行に懸念が示され ()、成績等によって子どもの声を選別しないよう勧告されています ()。共通の改善点は、子どもの成熟度や意思能力を個別に評価し、年齢や成績で一律に排除しない仕組みを作ることです ()。具体的には「○歳未満でも意見表明の機会を与える」「子どもの意見聴取に親の同意を不要にする」などの措置が各国で提案されており (CRC/C/FIN/CO/5-6) (CRC/C/FIN/CO/5-6)、日本を含め全ての子どもが声をあげられる環境整備**が急務です。
  • 周辺化された子どもの声: 障がいのある子どもや少数派の子ども、幼い子どもなど、声が届きにくいグループへの配慮不足も共通しています。英国ではロマや難民、LGBTIの子ども等への差別が指摘されました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)し、オーストラリアでも先住民の子や障がい児、女児の意見が埋もれがちである点が懸念されています (CRC/C/AUS/CO/5-6)。委員会は各国に、脆弱な立場にある子どもの声を積極的に拾い上げる施策を強化するよう求めました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (CRC/C/AUS/CO/5-6)。改善策としては、障がい児が意思表明できるよう合理的配慮(手話通訳等)を提供すること、マイノリティの子どもが参加できる場を設けること、幼児の意志も表現方法(身振り等)を工夫して汲み取ることなどが考えられます。誰一人取り残さない参加を実現することが各国共通の目標です。
  • 専門家・大人への教育研修不足: 子どもの意見を尊重するための大人側の知識・態度不足も広く見られます。委員会は「子どもと関わるすべての専門職に対し、第12条を含む児童の権利に関する定期的研修が必要」であると繰り返し勧告しました () (CRC/C/FIN/CO/5-6)。教師、司法関係者、ソーシャルワーカー等が子どもの声に耳を傾けるスキルと姿勢を持つことが不可欠です。また一般の大人や親に対する啓発も重要で、フランスでは社会全体への意識啓発プログラムが提案されています ()。各国共通の改善点は、専門家研修制度の充実広報・啓発活動の強化を通じて、大人が子どもの権利と意見表明の価値を理解することです () ()。日本でも例えば教員研修や司法研修への児童権利の組み込みが考えられます。
  • 社会的意識・文化の課題: 子どもの声に対する社会全体の意識不足や否定的態度も課題です。英国委員会は「子ども期への嫌悪(intolerance of childhood)や否定的態度」が社会やメディアに存在すると指摘し、この是正を促しました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。日本でも年長者を尊重し子どもは従うべきという文化が根強く、子どもが意見を言いにくい雰囲気があります。委員会の勧告にある「威圧や罰からの保護」という一文は、日本の上下関係文化において子どもの意見表出が抑圧されがちであることを暗に示しています ()。共通の改善点は、子どもを権利の主体として見る社会意識への転換です。メディアキャンペーンや学校教育で子どもの権利を周知し、子どもの声を「生意気な反抗」ではなく建設的な意見**として受け止める社会風土を醸成する必要があります () ()。

以上のように、第12条の実現に向けて各国が直面する課題は共通する部分が多く、それに対する改善策も互いに通じるものがあります。委員会の勧告は、法改正による制度保障から文化・意識の変革まで多層的であり、これらを総合的に講じていくことが重要といえます。

子どもの権利委員会の一般的意見第12号の主なポイント

子どもの権利委員会は2009年に**一般的意見第12号「子どもが意見を表明する権利」**を発表し、第12条の詳細な解釈と履行指針を示しました。この一般的意見は各国への勧告にも度々引用され () (CRC/C/AUS/CO/5-6)、第12条実現の基本原則となっています。その主なポイントは以下のとおりです。

  • あらゆる事項で子どもの意見を自由に表明させること: 第12条1項は、「子どもが自分に影響を与えるあらゆる事柄について自由に意見を表明する権利」を定めています (General Comment No. 12 (2009) The right of the child to be heard | Save the Children’s Resource Centre)。一般的意見第12号は、この権利が日常生活の小さな事柄から国家の政策決定に至るまで広く及ぶことを強調しています。家庭内の進路選択や学校での校則決定、地域の環境問題など、子ども自身に関わる問題には子どもの声を必ず聴くべきだとしています。
  • 年齢による制限を設けない(能力に応じた配慮): 子どもは発達段階に応じて意見表明能力を獲得していきますが、一定の年齢以下だからといって意見表明の機会を奪われてはならないとされています ()。一般的意見では、年齢はあくまで目安であり、子どもの成熟度(判断能力)に応じて意見に重みを与えるべきと述べられています (CRC/C/AUS/CO/5-6)。つまり**「能力の発達した子ども」**であれば年齢に関係なく意見を聴取しなければならず ()、発達途上であっても子どもなりの表現(言語以外の仕草等も含む)を尊重すべきと説いています。委員会が日本やフィンランドに年齢制限撤廃を求めたのも、この原則に基づくものです () (CRC/C/FIN/CO/5-6)。
  • 意見を「聴くだけ」でなく「考慮する」こと(デューウェイト): 第12条は子どもの意見表明権と並んで、その意見が適切に考慮される(due weightを与えられる)*ことを要求します (General Comment No. 12 (2009) The right of the child to be heard | Save the Children’s Resource Centre)。一般的意見第12号は、子どもの意見を大人が真摯に受け止め、意思決定に反映させる責任を強調します。単に子どもに話させるだけでなく、結果にどう反映したか子どもにフィードバックすることも重要な要素とされています。英国への勧告で「子どもが聞かれるだけでなく耳を傾けられること」*が強調されたのはこの趣旨です (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。また日本への勧告でも、子どもの意見が適切に考慮されるよう求めています ()。要は子どもの声を意思決定プロセスの中で実質的に位置付ける**ことが求められます。
  • 司法・行政手続への子どもの参加権: 第12条2項は、裁判や行政手続で子どもが意見を述べる機会を保障するよう定めています (General Comment No. 12 (2009) The right of the child to be heard | Save the Children’s Resource Centre)。一般的意見第12号では、この規定を具体化し、裁判所での意見陳述、調停や聴聞への子どもの出席、代弁者の選任などを通じて子どもの声を届けるべきと説明しています。各国への所見でも、親権訴訟や非行少年の手続、難民審査などで子どもの意見聴取を義務付けるよう勧告されました (CRC/C/FIN/CO/5-6) (CRC/C/AUS/CO/5-6)が、これらは一般的意見の方針と合致します。また**手続が子どもにとって分かりやすく配慮された形(チャイルドフレンドリー)**で行われる必要も強調されています。フランスへの勧告でメラニー室の整備が求められたのも、司法で子どもが安心して話せる環境を作る一例です ()。
  • 子どもの意見表明の場を保障する(参加機関の設置): 一般的意見第12号は、国家や地域レベルで子どもが意見を集団として表明する場(例えば児童議会、子ども委員会など)を奨励しています。子どもは個人としても意見を言えますが、集団の一員として社会participationする権利もあります。英国やフランスで子ども議会の整備が勧告されたのはこの理念によるものです (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) ()。学校の生徒会や自治体のユース評議会も、子どもの政治参加の一形態として推奨されます。子どもの組織化された声を政策に反映させることは、第12条実現の重要な一側面です。
  • 意見表明のための支援と安全確保: 子どもが自由に意見を言うには、大人の支援と安全な環境が必要です。一般的意見第12号では、子どもが意見を述べやすいよう情報提供をしたり、意思表明を支援する人員を配置したりすること、そして意見を述べたことで子どもが不利益を被らないよう保護することが求められています。日本への勧告にあった「威圧・罰からの保護」や、韓国・英国への勧告で見られた「報復を恐れず表現できる校風づくり」 ()は、この考えに沿ったものです ()。子どものプライバシー保護(意見を述べた内容が勝手に公開されない等)も含め、子どもが安心して本音を話せる条件整備が重要とされています。
  • 大人への教育と社会啓発: 最後に、一般的意見第12号は条約の理念を社会に浸透させることの大切さを述べています。政府は子どもの権利、とりわけ意見表明権について親や専門家、子ども自身に教育・啓発する義務があります ()。多くの国で専門家研修や人権教育の強化が勧告されているのは、一般的意見のこの趣旨を受けたものです ()。子どもが自分の権利を知り、大人も子どもの権利を尊重する社会になることが、第12条履行の前提条件といえます。

以上、一般的意見第12号は**「子どもの声をあらゆる場で尊重し、意思決定に反映させる」**ための指針を包括的に示しています。この内容は各国の施策の指標となり、日本のように近年基本法に取り入れる国も出ています (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)。委員会の最終所見はこの一般的意見に則って作成されており、第12条実現にはこれら原則の具体化が不可欠です。

日本の現状に対する委員会の評価と勧告(他国との比較)

上述のとおり、日本に対する2019年の最終所見では子どもの意見表明権の保障が不十分である現状が厳しく批判されました ()。委員会は日本政府が一部法改正を行ったことは認めつつも、子どもの声が社会や制度の中で軽視されていると判断しています。この評価と勧告内容を、他国と比較しながら分析します。

まず、日本の課題として指摘された**「あらゆる事柄で子どもの意見が自由に表明され尊重されていない」という点は、実はフィンランドや韓国などでも共通して見られました。しかし日本の場合、委員会は「年齢制限なく」**意見を表明する権利を保障することを特に強調し ()、これが緊急勧告に位置付けられました ()。フィンランドも同様に12歳の年齢制限撤廃を求められていましたが (CRC/C/FIN/CO/5-6)、日本では法律上明示された年齢基準こそないものの、暗黙の制限(「小さい子は意見を言えない」という風潮)が強いため、それを打破する必要性が強調されたと言えます。韓国では13歳未満への権利拡大が議論中でしたが ()、日本は議論の段階にも至っていないため、他国以上に遅れが目立つ状況でした。

また、日本では子どもが意見を述べた際の扱われ方について、委員会が異例とも言える「威圧や罰からの保護」という表現で懸念を示しました ()。これは、子どもが大人に意見すると「生意気だ」と叱られたり、集団から浮いてしまったりする日本の文化的側面を捉えたものと考えられます。他国でも学校での懲戒(韓国の校則問題 ())や社会の否定的態度(英国の「子ども期への嫌悪」 (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx))が問題視されましたが、日本の場合家庭内や学校内の上下関係が子どもの沈黙を生んでいる点に国際的な目が向けられたことは特筆すべきです。例えば英国では子どもの権利運動やメディアの監視もあり、子どもを頭ごなしに黙らせる行為への批判意識が高まりつつあります。それに対し日本はそうした批判の機会が少なく、子どもの声が抑圧されやすい土壌が残っていると評価されたといえます。

制度面の比較では、子どもが社会参画できる公式な枠組みの欠如が日本の弱点です。英国にはYouth Parliament(若者議会)が存在し、全国規模で若者の意見を集約して政府に提言する仕組みがあります (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。フランスでも子ども議会(Parlement des Enfants)や子ども評議会が活発に機能し、首相との対話も定例化されています ()。韓国は政府主催で全国子ども総会を開催し子どもの意見を政策化する努力をしています ()。フィンランドも自治体ごとに若者評議会の設置を推進中です (CRC/C/FIN/CO/5-6)。一方、日本には全国レベルの子ども参加機関が事実上存在しません。教育現場では生徒会活動がありますが、学校内事項に留まり国政レベルには届きません。自治体単位で子ども議会を開催する例も増えていますが、それらは継続的な制度というより啓発イベントの域を出ません。委員会から見れば、日本は子どもが意見を政策提言できる公式チャネルが欠けており、これは他の先進国と比べ明らかな遅れと言えます。実際、委員会が日本に対し「家庭や学校、地域から国家まであらゆる場での子どもの主体的参加」を促したのは、この構造的欠如を補う狙いでしょう ()。

さらに、子どもの権利擁護の独立機関の有無も大きな違いです。英国・フランス・オーストラリア・フィンランドなど多くの国には、政府から独立した**子どもの権利オンブズマン(子どもコミッショナー)**が設置され、子どもの声を代弁したり行政に勧告したりしています。韓国も国家人権委員会の中に子どもの権利部門があります。ところが日本には2019年時点で全国的な独立人権機関がなく、子どもに特化したオンブズマンも存在しません。委員会は日本に対し、「子どもの権利を監視し子どもからの申立てを扱える独立機関」を早急に設立するよう勧告しました ()。これは第12条直接の問題ではありませんが、子どもが自らの権利侵害を訴える受け皿が必要と判断されたものです。他国では子どもコミッショナーが子どもの意見を社会に届ける役割を果たしていますが、日本ではそれを担う主体が不在である点で大きく見劣りします。

もっとも、日本にも前向きな変化の兆しはあります。2016年の児童福祉法改正で「子どもの意見表明の尊重」が明文化されたことは委員会も評価しており ()、国内法にCRC第12条の理念を取り込む第一歩でした。また近年、日本政府は子ども家庭庁の設置(2023年4月)および子ども基本法の施行(2022年制定)という大改革を実施しました (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)。子ども基本法には「全ての子どもがあらゆる場面で年齢や発達に応じて意見表明し、社会参画する機会を有すること」「子どもの意見と最善の利益が尊重されること」が基本理念として明記されています (Outline of the Basic Act on Children’s Policy) (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)。これは一般的意見第12号の精神を国内法に定着させたもので、日本における一つの強みと言えます。このように法制度面では遅ればせながら整備が進みつつあるため、今後はこれを実践に移す具体策が問われます。

他国との比較から明らかなように、日本は文化的・制度的両面で子どもの声を活かす仕組みが不足していました。その結果、委員会の評価も厳しく、緊急勧告が出る事態となりました。しかし子ども基本法の制定など追いつきの動きも始まっています。次章では、これらの所見と他国の取り組みを踏まえて、日本が今後優先的に講ずべき具体的施策を提言します。

日本が採るべき具体的な政策・施策の提言

日本政府および社会が、第12条の理念を実現し子どもの声を尊重するために、今後取り組むべき具体的施策を以下に提言します。これらは前述の委員会勧告や他国の事例に基づくもので、日本の法制度・文化に即した形での実施を想定しています。

  1. 子どもの意見表明権の法的保障を強化: 子ども基本法第3条③・④で謳われた理念 (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)を具体化するため、関連法規の整備を進めます。具体的には、民法・家事事件手続法の改正により離婚・親権紛争や虐待対応で子どもの意見聴取を明文化する、児童福祉法や学校教育法の指針に「年齢にかかわらず子どもの意見を聞くこと」を盛り込むなど、各分野で第12条の趣旨を徹底します。また年齢に基づく画一的制限を設けないよう法律の文言を見直し、例えば「意見を表明するのに十分な理解能力を有する子ども」(ドイツ法などの表現例)といった規定に改めることも検討されます。法整備により、大人側の裁量で子どもの声が無視されない仕組みを強固にする狙いです。
  2. 全国レベルの子ども参加機関の創設: 子どもが政策立案に意見できるよう、「子どもコミッショナー会議(仮称)」や「全国子ども議会」の設立を提案します。子ども家庭庁内に子ども代表で構成される審議会や子ども参与委員を置き、政策の企画立案段階から子どもの意見を反映させます (Outline of the Basic Act on Children’s Policy) (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)。例えば基本法に基づく**「子ども政策大綱」策定時には子どもの意見聴取を義務化し (Outline of the Basic Act on Children’s Policy) (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)、全国の子どもから募集した意見や提言を審議会に諮るプロセスを制度化します。また国会においても、英国のYouth Parliamentのように「子ども国会」を定期開催し、子どもが選挙で選ばれた代表者として模擬国会で議論・提言する場を設けます。委員会も各国に子ども議会の設立を推奨しており (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) ()、日本でも「子ども版国会」**の恒常化は有効です。こうした場で採択された子ども提言を政府・国会が正式に受け取り、政策や法案に反映する仕組みを作ります。
  3. 地方自治体における子ども参画の推進: 全国レベルだけでなく、各自治体で子ども/若者議会や子ども委員会を設置し、地方行政に子どもの声を活かします。フィンランドでは全市町村に若者評議会を設けるよう勧告されました (CRC/C/FIN/CO/5-6)。日本でもすでに子ども議会を開催する自治体はありますが、更に踏み込んで自治体条例で子ども参加機関の設置を義務化することを検討します。例えば「〇〇市子ども委員会条例」を制定し、学校・地域の子どもから選出されたメンバーが市の基本計画策定や予算編成について審議・提言できる権限を付与します (CRC/C/FIN/CO/5-6)。併せて自治体職員による**子ども影の内閣(Shadow Council)**的な取組も考えられます。自治体予算への子ども参加(「子ども participatory budgeting」)も韓国への勧告で触れられており ()、日本でも地域レベルで子どもが予算提案・評価に加われる仕組みを試行します。地方から国まで、多層的に子どもの意見を政策へ届ける道筋を整えることが重要です。
  4. 学校における子ども参加の拡充: 学校は子どもに最も身近な社会です。学校運営への生徒参加を制度化するため、各学校に**「生徒参画指針」を設け、生徒会が校則改訂や学校行事の企画など意思決定に関与できるようにします。韓国では校則による人権侵害が問題となり、委員会が規則改正を求めました ()。日本でも、生徒と教師が対話して校則を見直す仕組み(生徒・教職員合同委員会など)を作り、子どもの意見を学校ルールに反映させます。また文部科学省は「子どもの権利に配慮した学校運営ガイドライン」**を策定し、学校評価の項目に「生徒の意見反映度」を加えるなどして、生徒の声を聞く学校文化を全国で推進します。いじめ対策や懲戒処分の場面でも生徒の意見を聞く手続を導入し、生徒の権利が守られるようにします。さらに、生徒会連合や学校間の子どもサミットを支援し、教育行政への提言をまとめさせることも考えられます。学校という基盤から子どもの意見尊重を定着させることが、社会全体への波及につながります。
  5. 家庭や施設での子どもの意見尊重: 家庭内虐待や施設養護において、子どもの声が黙殺されないよう仕組みを強化します。例えば里親・施設職員向け研修に子どもの意見尊重の項目を加え、日々の生活で子どもの希望や不満を聞き取るスキルを養います。子ども委員会(自立生活審査会)のようなものを児童養護施設ごとに設け、施設運営や行事について子どもたちが意見できる場を定期開催します。家庭では行政がペアレントトレーニングや子育て支援を通じて「子どもの話を聞く子育て」を普及させます。例えば乳幼児健診時に保護者へ子どもの権利に関するリーフレットを配布し、成長に応じて子ども自身の意向を尊重する子育て法を啓発します。これらにより、家庭やケア施設といったプライベートな領域でも子どもの声が埋もれないようにします。
  6. 子ども支援専門職への体系的研修: 子どもと関わるすべての大人に対し、児童の権利・意見尊重に関する研修を定期実施します。委員会も日本に対し「あらゆる職種の人々への定期研修」を勧告しています ()。具体策として、教員免許更新講習や司法修習、公務員研修などに子どもの権利条約研修を組み込み、第12条の理念と具体的な実践方法(例えば子どもへのインタビュー技法、意見の聞き取り方)を習得させます。家庭裁判所調査官や児童相談所職員、スクールカウンセラーなどには専門研修を強化し、子どもの話を引き出し意思決定に反映する手法を訓練します (CRC/C/FIN/CO/5-6)。また医師・看護師向けにも、治療方針の説明時に子どもの意向を確認するコミュニケーション研修を実施します。研修の効果測定として、研修修了者から子どもの満足度調査を行い、子どもが「話を聞いてもらえた」と感じているか評価しフィードバックします。大人側の意識と能力を底上げすることで、子どもの声を受け止める土壌を整えます。
  7. 独立した子どもの権利擁護機関の設置: 委員会勧告にもあるとおり ()、日本に**「子どもコミッショナー(児童権利委員)」**を設置します。政府から独立した機関として、子どもの権利救済や政策提言を行う専門組織を法的に整備します ()。具体的には、国会任命による「児童の権利委員」を置き、子どもからの苦情申立てを受理・調査・勧告できる権限を付与します。各都道府県の既存の児童相談所等とも連携し、子どもが匿名・無料で相談できるホットラインを全国統一番号で設けます。フランスの「オンブズマン(人権擁護官)」や英国・豪州の「チルドレンコミッショナー」のように、独立機関が子どもの代弁者となることで、行政や学校で意見を無視された子どもでも救済を求めることができます ()。この機関は年次報告で政府の対応を監視し、必要に応じて法律改正案を提言する役割も担います。子どもの声を拾い上げ是正措置に繋げるセーフティーネットとして、独立機関の設置は急務です。
  8. 子ども意見募集とフィードバックの制度化: 政策立案や法律制定の際に、パブリックコメントの子ども版を実施します。オンラインで子ども向け意見募集サイトを開設し、わかりやすい言葉で政策案を説明して子どもの意見を募ります。例えば教育改革や気候変動対策の策定時に、小中高生から意見やアイデアを投稿してもらい、それを担当部署が検討します (CRC/C/AUS/CO/5-6)。寄せられた意見に対しては、採用の有無にかかわらず子ども向けに結果をフィードバックします。「あなたの意見のここは政策に反映されました/今回は見送られました(理由○○)」といった返答を公表し、子どもが自分の声がどう扱われたか確認できるようにします。これは委員会が韓国政府に対して指摘した「子ども参加へのフィードバック不足」を解消する取り組みです ()。子ども基本法にも「子ども・若者や子育て当事者の意見を施策に反映する」旨があるため (Outline of the Basic Act on Children’s Policy) (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)、それを具体化する参加・評価サイクルを制度化します。子どもたちに**「声をあげればちゃんと届く」**という成功体験を与えることが、継続的な意見表明意欲を育むでしょう。
  9. 子どもの権利教育と意識啓発の強化: 子ども自身が自らの権利と意見表明の価値を理解し、また大人が子どもの声を肯定的に受け止める社会を作るため、権利教育・啓発を抜本的に強化します。学校教育において、小学校から子どもの権利条約の学習を取り入れ、第12条を含む基本的権利についてディスカッションする機会を設けます。例えば道徳や特別活動の時間に「みんなの意見を聞き合う」ワークショップを実施し、子ども同士が互いの意見を尊重する態度を養います。中高では生徒会活動を通じて模擬選挙や討論会を行い、社会参加の疑似体験を提供します。大人に対しては、政府広報やマスメディアを活用して**「子どもの声に耳を傾けよう」キャンペーンを展開します。具体的には、子どもが意見を言う場面を描いたテレビCMやポスターを制作し、「それは将来の社会を良くする意見かもしれません」といったキャッチコピーで啓発します。企業にも協力を呼びかけ、子ども参加のCSR活動(例:ユニセフとの共同キャンペーン)を促します。さらに、毎年11月の「世界子どもの日」(11月20日)に合わせて子どもの権利フォーラム**を開催し、社会全体で子どもの声に耳を傾ける機運を高めます。これらの啓発により、「子どもは未熟だからわからない」という偏見を減らし、子どもを意見発信主体として認める社会意識を醸成します (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。権利教育と啓発は長期的な文化変革につながる重要な施策です。
  10. 関連する国際基準への参加: 日本政府が子どもの意見表明権重視の姿勢を内外に示すため、子どもの権利条約選択議定書第3号(コミュニケーション手続)への批准を推進します。これは子どもが国連委員会に権利侵害を直接申し立てできる制度であり、委員会も日本に批准を勧告しています ()。批准により、国内で声をあげにくい子ども(例えば家庭内虐待の被害児童など)も国際的救済にアクセスできるようになります。また、各国の子ども参加施策を共有する国際会議やワークショップへ積極的に参画し、良い実践の学習と国内への取り入れを図ります。例えば欧州評議会の子ども参加ガイドラインや、ユニセフの子ども参画ツールキットなど国際的知見を活用し、日本版マニュアルを整備します。国際社会との協調により、日本の取り組みを客観評価し改善していく姿勢が重要です。

以上の提言はいずれも、子どもの「意見を言う権利」を具体的に保証し、子どもの声を社会の意思決定に組み込むことを目的としています。子ども基本法で掲げられた理念 (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)を実現するには、政府のみならず自治体、学校、家庭、民間団体など社会のあらゆる主体が連携して施策を講じる必要があります (Outline of the Basic Act on Children’s Policy) (Outline of the Basic Act on Children’s Policy)。特に日本の場合、長年の文化や制度の慣行を変える努力が求められます。しかし他国の事例に学びつつ上記のような具体策を積み重ねていけば、子どもが自分の考えを遠慮なく述べ、それが社会をより良くする力となる未来が開かれるでしょう。それこそが条約第12条の精神であり、子ども一人ひとりの幸せと社会全体の発展につながる道筋だと結論付けられます。