第25条

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第25条の目的・意義

子どもの権利条約(CRC)第25条は、**「措置の定期的見直し」**に関する規定です。つまり、公的機関によって保護や治療の目的で家庭から離れて施設や里親などに措置された子どもについて、その処遇内容や環境を定期的に見直す権利を保障しています (Article 25: Periodic review of placement | CRIN) (Article 25: Periodic review of placement | CRIN)。

この条項の意義は、子どもが必要なケアや保護を確実に受け続けられるよう、また不適切な扱いや長期の措置の固定化を防ぐために、独立した監督の下で定期的にチェックを行う点にあります (Article 25: Periodic review of placement | CRIN)。適切な時期に措置を見直すことで、子どもの最善の利益に沿って家庭への復帰やケア内容の改善を図り、子どもの意見も尊重される仕組みを築くことが目的です。

各国の最終所見に見る第25条の課題と勧告

イギリス(英国)

イギリスに関する子ども権利委員会の第5回定期報告(2016年)の最終所見では、多くの子どもが家庭を離れて公的ケアを受けている状況やその問題点が指摘され、第25条の趣旨に関連して以下の勧告が示されました。主なポイントは次のとおりです。

  • 措置の増加と理由の適正化: イギリスでは近年ケア措置下の子どもが増加しており、早期介入や家庭支援が不十分なまま、必ずしも子どもの最善の利益に基づかない形で子どもが家庭から引き離されるケースがあると懸念されています (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。とりわけ貧困(経済的困窮)を理由に子どもを措置することや、「里親のほうが子どもにとって利益がある」といった理由で生物学的家族から離す事例が報告されており、委員会はこうした措置理由を改善するよう求めました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。委員会は「貧困のみを理由に子どもを家庭から引き離すべきではない」と強調し、必要な場合には親や法定保護者(親族によるケア提供者を含む)への支援を強化するよう勧告しています (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。
  • ケア下の子どもの状況の安定と見直し: 公的ケア下にある子どもたちについて、担当ソーシャルワーカーの頻繁な交代や1年に2回以上も転居・転籍(里親家庭の変更等)を経験する子どもが多いことが問題視されました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。こうした度重なる措置変更は子どもの生活のあらゆる面に悪影響を及ぼすため、委員会は国に対し**「子どもに安定したケアを提供するためのあらゆる措置を講じ、担当職員の定着や不要な措置変更を避けるよう努めること」を勧告しました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。また、子どもが実親や兄弟姉妹と連絡を取り続けられるよう、可能な限り実家庭に近い場所・環境に措置することや、正当な理由なく兄弟姉妹を別々に措置しないことも求められています (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。これらは措置後の定期的な見直しと調整を通じて達成すべきであり、第25条の趣旨である措置の継続的監督が強調されています。さらに、委員会はケア離脱後の支援**が不十分である点にも触れ、若者がケアを離れる際には住居・就労・教育面で十分なサポートを提供するよう勧告しました (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。子ども自身も早い段階からケア計画や将来について十分な情報提供を受け、自らの意見を表明できるようにすべきだとしています (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx)。

フランス

フランスに対する第5回定期報告の最終所見(2016年)および第6・7回報告の最終所見(2023年)では、家庭環境を失った子どもへの代替ケア(里親や施設)に関し、第25条に即した監督・見直し体制の強化が勧告されています。主なポイントは次のとおりです。

  • 代替ケア措置の定期見直しと苦情処理: フランスでは児童保護のため家庭から離れて暮らす子どもたちについて、里親家庭や施設ケアの状況を定期的に見直すこと、そしてケアの質を監視することが求められました (CRC/C/FRA/CO/6-7)。委員会は国に対し、「里親ケアや施設ケアに措置された子どもの配置を定期的に見直し、そのケアの質をモニタリングする」よう勧告しています (CRC/C/FRA/CO/6-7)。また、その際には子どもが虐待や不適切な扱いを訴えるための子どもにとって利用しやすい申立て・苦情申出の仕組みを整えることも含まれています (CRC/C/FRA/CO/6-7)。これは、第25条の権利を具体化する措置であり、子どもが安心・安全にケアを受け続けられるよう独立した監督を行う体制づくりです。
  • 代替ケアの基準と家族的養育の推進: 加えて委員会は、子どもを施設等に措置する判断基準を明確化し、子どものニーズと最善の利益に基づくよう改善すること、可能な限り家庭的な養育環境(里親など)を優先することも促しています (CRC/C/FRA/CO/6-7) (CRC/C/FRA/CO/6-7)。たとえば「感情的な絆など子どもの必要性に基づき、施設措置の是非を判断する明確な基準を設けること」や、「家庭で暮らせない子には里親ケアを充実させること」が勧告されています (CRC/C/FRA/CO/6-7) (CRC/C/FRA/CO/6-7)。さらに、フランス国内で児童保護に関する観察機関(全国児童保護観察所および県児童保護観察所)がデータ収集と司法決定の履行状況を継続的に公表するよう求め (CRC/C/FRA/CO/6-7)、ケア措置の実効性と透明性を高める取り組みも勧告されました。これらにより、ケア措置が適切になされているかを定期的に検証し、必要に応じて見直す仕組みを強化する狙いがあります。

フィンランド

フィンランドの第5・6回定期報告に対する最終所見(2023年)では、家庭環境を離れて暮らす子どもへの対応について包括的戦略の策定と、第25条に沿った措置の見直し強化が提言されました (CRC/C/FIN/CO/5-6)。ポイントは次のとおりです。

  • 包括的な代替ケア戦略と定期的な措置見直し: 委員会はフィンランドに対し、まず児童の代替ケアに関する包括的な戦略を策定するよう勧告しました (CRC/C/FIN/CO/5-6)。子どもが家庭から分離されるのは本当に必要な場合に限り、その判断は子どもの最善の利益に即して行われるべきこと、そして措置後も定期的に配置の見直しを行い、可能であれば家族再統合(原家庭への復帰)を目指すことが盛り込まれています (CRC/C/FIN/CO/5-6)。これは、第25条の求める「措置の定期的見直し」を具体的に推進するものです。フィンランドでは児童福祉法の実施に十分な人的・財政的資源を投入し、専門人員の数と能力を拡充することも併せて求められました (CRC/C/FIN/CO/5-6)。また、代替ケアの施設や里親家庭におけるケアの質を監視する仕組みを整えること (CRC/C/FIN/CO/5-6)、ケア中の子どもが自らの権利について子どもに分かりやすい情報を得て、措置の決定過程やケア期間中に意見表明できるようにすること (CRC/C/FIN/CO/5-6)も勧告されています。
  • ケア後の支援強化: フィンランドでは、施設や里親ケアを巣立つ子どもへの支援が不十分であることも指摘されました(例えば、自立後の住居や教育・就労支援) (CRC/C/FIN/CO/5-6)。委員会は、ケア離脱後の各個人に合わせた支援策(アフターケアの計画)を整備し、家庭や地域社会への円滑な再統合を助けるよう勧告しています (CRC/C/FIN/CO/5-6)。これには、社会的・教育的なサポートの提供や、ケア離脱後も必要に応じて相談・支援できる体制づくりが含まれます (CRC/C/FIN/CO/5-6)。第25条の定期見直しの観点からも、ケア終了時・終了後の状況把握とフォローアップを行うことで、子どもの長期的な福祉を保障しようとするものです。

韓国(大韓民国)

韓国(大韓民国)の第5・6回定期報告に対する最終所見(2019年)では、代替ケアを必要とする子どもへの対応について、第25条に関連する以下のような勧告が出されています。

  • ケアの質の定期点検と苦情処理の整備: 委員会は韓国政府に対し、施設や里親など代替ケアにある子どもたちのケアの質を定期的に検証(レビュー)することを勧告しました。また、子ども自身が問題を訴え出られるよう苦情申出の手続へのアクセスを保障するよう求めています ([PDF] UN CRC – Better Care Network)。これにより、子どもたちが置かれた環境が適切か継続的に監督され、問題があれば速やかに是正される仕組みを強化しようとしています。
  • 家族再統合とアフターケア支援の強化: さらに、原家庭への再統合支援を強化し、ケア下の子どもが成年に達する(ケアを離れる)際の支援も充実させるよう勧告されました ([PDF] UN CRC – Better Care Network)。具体的には、可能な限り家庭に戻れるよう支援策を講じることや、里親・施設で育った子どもが成人後に社会に適応できるよう住宅、教育、就業などの面で支援を継続することが求められています。韓国では施設養護から里親養育への転換も課題となっており、委員会は家庭的養護の拡充や里親制度の強化にも言及しています(※最終所見全体より)。これらの勧告は、第25条が意図する措置中および措置終了時の子どもの福祉の継続的保障を図るものです。

オーストラリア

オーストラリアに対する最終所見(第4回:2012年および第5・6回:2019年)では、子どもが家庭を離れて生活する「アウトオブホームケア」(里親や施設等)に関して、第25条の定期見直しや質の監督に関連する課題が指摘されています。委員会はオーストラリアに対し、以下のような勧告を行いました。

  • 苦情処理制度の整備: 委員会は、ケア下にある子どもが自らの待遇について不平や問題を申し立てることができる子どもに優しい苦情申出制度を確立するよう明確に勧告しました (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce)。国家レベルで定期的にアウトオブホームケアの子どもたちにアンケート調査を行う計画はあるものの、それだけでは不十分であり、子どもが直接声を上げ問題解決を図れる独立した仕組みが必要だとされています (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce)。
  • 措置理由の分析と改善: また、子どもがケア措置に至る根本原因を調査し分析する大規模な研究を行うよう勧告されています (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce)。これは、多くの子ども(特に先住民であるアボリジニ・トレスストレイトアイランダーの子どもを含む)が家庭から離される背景にある問題(貧困、虐待、地域格差など)をデータに基づき把握し、予防策を講じるためです (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce)。委員会は、子どもの権利保護の観点から「なぜ子どもが措置されているのか」を把握することで、不必要な措置を減らし、家庭環境の改善支援につなげるよう求めました。
  • 先住民族の子どものケア: オーストラリアでは先住民族の子どもが高い割合で公的ケア下に置かれていることが懸念されており、委員会はこの問題にも言及しています(※2019年最終所見より)。具体的には、先住民族コミュニティと協力し文化的に適切なケアを提供することや、家族・親族によるケアの優先、そして措置の定期的な見直しを通じて可能な限り家庭に戻す努力をすることが求められました(※該当勧告の要旨) (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce)。これらは第25条の精神に則り、特に脆弱な集団の子どもについてケア状況を継続的に監督し改善するための勧告と言えます。
  • ケア離脱後の支援: 加えて、委員会は里親や施設を出た若者への支援にも触れ、18歳前後で公的ケアを離れる子どもが円滑に自立できるよう、住宅や教育・就労支援などのアフターケアを強化するよう促しました(※2019年最終所見より)。これはフィンランドやイギリスへの勧告と同様に、ケア措置終了後も子どもの福祉を見守るという第25条の観点から重要な課題として挙げられています。

日本

日本の第4・5回定期報告に対する最終所見(2019年)では、家庭外で生活する子どもの権利保障に関し、第25条に関連する重要な勧告がなされています。委員会は日本政府に対し、以下の点をとくに求めました。

  • 施設から家庭への移行と新ビジョンの徹底: 日本が2017年に打ち出した「新たな社会的養育ビジョン」(とくに「まず3歳未満の乳幼児は原則里親委託」「7歳未満の施設入所は原則禁止」を含む方針)について、委員会はその着実な実施を強く後押ししました ()。具体的には、明確なタイムラインを設定して子どもの脱施設化(特に幼い子の施設措置を止めること)を速やかに進め、里親委託を拡充するよう求めています ()。また、児童相談所による一時保護の運用を見直し、不必要に長期化させないことも勧告されました(児童相談所での一時保護の慣行を廃止すること) ()。これらは子どもを家庭的環境で育てる方向への転換策であり、第25条の背景にある子どもの福祉増進に資するものです。
  • 独立した定期的な措置見直しとケアの質監督: 委員会は、日本の社会的養護下にある子どもについて、外部の独立機関による定期的な措置見直し(評価)を行うことを勧告しました ()。例えば、里親家庭や児童養護施設等で暮らす子ども一人ひとりについて、配置先がその子にとって適切かどうか、ケア内容や子どもの状況を定期的に検証する仕組みを設けるよう求めています。加えて、ケアの質を監視するための仕組みを整備し、子どもが虐待や権利侵害に遭っていないかチェックすること、そして子どもが苦情やSOSを出せる安全でアクセスしやすい窓口を設けることも勧告されました ()。実際、委員会は「里親ケアや施設ケアに措置された子どもの待遇を定期的に独立の外部機関が見直し、ケアの質をモニタリングし、子どもが被る虐待の申立て・救済ができるようにせよ」と具体的に述べています ()。この勧告は、第25条の権利を日本の制度の中で具体化するための重要なステップです。
  • 資源配分と里親支援の強化: さらに委員会は、日本における社会的養護の資源配分を見直し、施設から里親等の家庭的養護への資源シフトを図るよう求めました ()。つまり、従来施設に充てられていた予算や人員を里親家庭の支援に振り向け、里親への研修やサポート体制を充実させることが勧告されています ()。これにより、子どもが家庭的な環境で安定したケアを受けられるようにし、措置の長期化による弊害を減らす狙いがあります。また、実親が子どもの最善の利益に反する判断をする場合には家庭裁判所が介入できるよう、里親委託ガイドラインを改訂すべきことも示されました ()。これらの措置は、子どもが家庭外で生活する状況を適切に監督し、必要に応じて見直すという第25条の精神に沿った制度整備といえます。

以上のように、各国に対する子ども権利委員会の最終所見では、第25条(措置の定期的見直し)の履行状況に関連して共通するテーマが見られます。それは、子どもが家庭を離れて暮らす状況下でも権利と福祉が守られるよう、独立かつ定期的な監督メカニズムを整備すること、そして可能な限り家庭環境に近づける努力(家族再統合や里親委託の推進)とケア終了後のフォローアップ支援を強化することです。

委員会の勧告は各国固有の課題に即したものではありますが、いずれも第25条の趣旨である「措置された子どもの権利擁護」のために不可欠な要素を詳細に解説・具体化するものとなっています。各国はこれらの勧告を踏まえ、法律や制度を整備し、子どもの最善の利益にかなう形で措置の見直しと改善を図っていくことが期待されています。

【参考文献】子どもの権利委員会・最終所見(英国、フランス、フィンランド、韓国、オーストラリア、日本)、CRC第25条条文。各出典は文中に【】で示した。 (Article 25: Periodic review of placement | CRIN) (Article 25: Periodic review of placement | CRIN) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (Microsoft Word – CRC_C_GBR_CO_5_24195_E.docx) (CRC/C/FRA/CO/6-7) (CRC/C/FRA/CO/6-7) (CRC/C/FRA/CO/6-7) (CRC/C/FRA/CO/6-7) (CRC/C/FIN/CO/5-6) (CRC/C/FIN/CO/5-6) ([PDF] UN CRC – Better Care Network) (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce) (Children deprived of their family environment | Australian Child Rights Taskforce) () () () ()